岩間の地域紹介

弁天様とお里

弁天様とお里昔、岩間のある所に、子どもの無いふうふが住んでいました。家の近くにある弁天様にお参りして「どうぞ、じょうぶで気立てのよい子をおさずけ下さい」とお願いしていました。
ある年のこと、やっと願いがかなって元気な女の子が生まれました。ふうふは大喜びでお里と名付け、大事に大事に育てました。
お里はすくすくと育ち、だんだんと美しくなり、気立てもやさしく親こうこうな娘となり「まるで弁天様の生まれかわりのようだ」と、うわさをされるようになりました。15、6になるとますます美しくなり、その上はたおりも上手なので、回りの村でもひょうばんになりました。ふうふは一日も早くむこをむかえ、孫の顔が見たいものとひそかにむこえらびをはじめました。
ところがある夏祭りの夜、お里はとなり村の青年太兵衛と知り合い、互に心ひかれ愛し合うようになりました。二人だけでの楽しい出会いが数多くなりました。けれどもその一方で、心優しいお里には、心の苦しみがふえ、笑顔がだんだん消えていきました。
太兵衛から結婚の話が出たり、両親からむこの話が出るたびに、悲しみが一だんと強くなりました。一人子同志なので大切に育ててくれた両親を捨てて太兵衛の下にとつぐ訳にもいかず、かといって両親に打明ける決心も出来ないで、一人むねをいためひたすら弁天様におすがりをしていました。
けれどもよい手立てが見付からないままにやせ細り、病の床に伏せるようになりました。太兵衛にあうことも出来ないで、心配する両親の顔を見ながらお里は、一人もだえ苦しみました。
ある夜ひそかに家を出たお里は、どこへともなくやみの中をひっそりと消えて行きました。
満開の桜の木の下にお里の着物とはきものが、きちんとそろえてあり、花びらがひらひらと散っていました。

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