岩間の地域紹介
でいだら坊の足っこ
むかしむかし、でいだら坊という物すごい大男が住んでいました。
頭を雲の上につき出して、のっしのっし歩き出すと草や木がいっせいに動いて、
「ゴーッ」と山をゆさぶるような風がふきました。田んぼや畑で働いている人とが、「でいだら坊よ」と大声でよんでもでいだら坊の耳まではとどきませんでした。
気のやさしいでいだら坊は、みんなにめいわくがかからないようにいつも気をつかっていました。田んぼや畑で働いている人や、道で遊んでいる子どもらをまちがってふみつぶさならないと、夕方から夜にかけて出歩きました。だから夕方になると方がたの家から、
「おーい。でいだら坊がくっとー。早く帰ってこー。」と、子どもをよぶ母親の声がしました。子どもらは陽の落ちた野道を、む中で走って家の中にかけこみました。
「でいだら坊は、どこさ行くんだっぺな。」
「こうたに強い風のふく晩は、加賀田山の方からあたご山をひとまたぎして、仲村のかねころばし山のふもとあたりへ出て、つく波山にこしをかけて、かすみがうらで手足をあらって大好物のカイコでも拾ってはら一ぱい食うつもりだっぺよ。」
いろりばたで子どもらは、お父さんの話を聞きながら、でいだらぼうの通りすぎる音を聞いていました。
鐘転山のふもとには「でいだら坊の足っこ」だという大きな足型をした池が残っていました。このいけはたたみ六じょうくしくらいの広さで足っこそっくりでした。
今はさい石場となってその足あとは、あとかたもなくなっていました。