岩間の地域紹介

馬鹿な婿様の話 その(1)

むかし、岩間のある所に、与作さんという正直で夫婦仲のよいお百姓さんが住んでいました。
ある年のお正月に、景気直しにと新しいどびんを買って来て、福茶をたてて神棚に供え、仲よく飲んでいました。
そこへ隣家のご主人が年賀に現われて、
「おめでとうござんす。旧年中はお世話様になりやした。本年もどうぞ相変りませず」
と、ていねいな挨拶の受け応えがあり、そのあと、
「まあまあ福茶をどうぞ一服」と、湯のみを出しました。
それではと囲炉裏端にすわりこんだ隣家のご主人をもてなそうとおかみさんは、荼を入れ賛える為に流し場の方へどびんを特って立ちました。 
「 ほれ・・・。何をしているんだいつまでも。ほんとにのろまなんだから、早くしろ」
と、与作さんに急かされたおかみさんは、あんまりあわてたのですてんと転びました。どびんは土間におちて、「ガシャ?ン」 とわれてしまいました。
「このあま、せっかく景気直しに買ったどびんを 割るなんて、正月早々縁起でもねぇ」
と、日頃は温厚な与作さんも、まっ赤になっておこり出して、ぶるぶるふるえながら右手で大きなこぶしを作って、あわやおかみさんの頭の上へ
そのとき隣家の主人が立ち上がって、
「ははあ・・・。まことにめでたい話だわい。この家では、ドンとヒンがまっぷたつ。貧乏神を追い払い、残るはかねのつるばかり。正月早々めでたいな。七福神も舞い込んで、ああめでたいな、めでたいな」
と、土間に落ちて転がっている破片の中から、どびんのかねのつるを拾いあげてそれを振りながら、おどけて踊りました。めでたし、めでたし、おめでたし。 

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